佐藤農場では農薬や化学肥料など土壌や人体に悪影響を与えてしまう恐れのあるものは使用せず、昔ながらの手法で栽培管理しています。まずは土作りです。前年秋に畜産由来の堆肥を田んぼに撒き、冬の間に馴染ませます。佐藤農場では養豚も行なっており屑米が配合されたエサを豚が食べ、その糞や揉み殻を混ぜて熟成させた堆肥も田んぼに還元させるべく活用しています。
春には近郊で産出された鉱物系の土壌改良材を撒き、後の耕耘時に圃場に混ぜ込みます。いずれも有機栽培に適合した資材です。
次に苗作りです。佐藤農場では育苗箱で苗作りを行いますが、種まき後は一般的なハウス育苗ではなく、トンネル育苗という昔からある方法で苗作りを行なっています。トンネル育苗とは田んぼに直接苗箱を置き、鉄筋とビニールシートで簡易なミニハウスを作って栽培する手法で、ハウス栽培よりも外気導入がしやすく良い苗を作ることができるというメリットがあります。
次に除草です。田んぼはイネに適した栽培地ですが、同様にイヌビエ、コナギ、オモダカ、クログワイといった多くのいわゆる雑草も繁茂します。それらの雑草を取り除かないと稲のための栄養分や日光が奪われてしまい生長できなくなってしまいます。そのため佐藤農場では紙マルチ、マガモ除草、機械除草という複数のいずれも手間のかかる方法で田んぼの中の除草を行なってきました。いずれの手法でも土壌には余計な薬品を入れないことから田んぼにはカエルやクモやアメンボ、タニシやドジョウ、そしてトンボやイナゴという多くの生き物が共生していて、まれにカブトエビが発生することもあります。
紙マルチとは
紙マルチとは田植えを行う際、専用の田植え機を使ってロール状の不織布を敷きながら苗を植え付けるもので、日光が苗以外に当たらないようになるので初期の雑草発生を抑える効果があるものです。また紙には炭が混入されており黒い色をしていることから地表面の温度を上げる効果もあります。約1ヶ月で分解されてしまいます。
マガモ除草とは
いわゆるアイガモ農法と呼ばれるものです。あらかじめネットを張り巡らせた田んぼにマガモやアイガモの幼鳥を放し飼いにして、マガモが苗や水面の昆虫を捕食するために動き回ることによって田んぼの泥が巻き上げられて常に濁ることで光合成を抑制し雑草が生長しにくくなるものです。
機械除草とは
ミニカルチと呼ばれるエンジン付きの除草機を用いるものです。爪が付いた金属製の筒を苗の間に合わせ回転させながら前進することで雑草を泥に沈めたりあるいは引き抜いて水面に浮かび上がらせて物理的に除草するものです。田植えの跡に合わせて作業しますが、田んぼの端まで行ったら人力で機械を持ち上げて次の田植え跡に条合わせしなければならず、非常に労力を要します。